インタビュー[「機動戦士ガンダム U.C.HARD GRAPH」関連書籍3冊同時発売記念コメント]

小説『機動戦士ガンダム U.C.ハードグラフ [小説] 地球連邦軍編』、『機動戦士ガンダム U.C.ハードグラフ [小説] ジオン公国軍編』そしてコミックス『機動戦士ガンダム U.C.HARD GRAPH 鉄の駻馬(1)』が5月26日に3冊同時発売。
「U.C.HARD GRAPH」をそれぞれ視点から描いた3作品の著者からのコメントを紹介します。

大人のガンダム小説登場。

地球連邦軍×ジオン公国軍
それぞれの視点……

あの戦争とはなんだったのか?
一年戦争を振り返って30年後の世界に出版されたという設定の本書。
30年という歳月が地球連邦政府によって非公開とされた事実を明らかに――。
地球連邦軍兵士を襲った第二次降下作戦の事実、
ジオン公国軍技術兵が明かした降下作戦の真実と地球での捕虜生活など……
それぞれの軍の兵士たちが何を見て、何を思い、何を考え、行動したのか。
2冊の書物ノンフィクションが、一年戦争の歴史を翻す!

『機動戦士ガンダム U.C.ハードグラフ [小説] 地球連邦軍編』

高橋昌也  たかはしまさや
1961年生まれ。大学生時代にモデラー集団「ストリームベース」に所属し、小田雅弘・川口克己らとともに、1980年代の「コミックボンボン」(講談社)等での『ガンダム』関係の模型製作や企画、記事構成に参加。
その後、ガンダムシリーズの初の漫画オリジナル作品『MS戦記 機動戦士ガンダム0079外伝』(講談社刊)では原作を担当。ガンダム関連の代表的な著書に『GUNDAMSENTINEL ALICEの懺悔』がある。

[1]「U.C. HARD GRAPH」の小説を手がけてみていかがでしたか?

今回の本では、モビルスーツ同士の戦いはもちろん、モビルスーツのパイロットの視点が存在しません。小説の舞台としている時期には、いわゆる「後付け設定」はともかく、地球連邦軍にモビルスーツはガンダム、ガンキャノン、ガンタンクという試作機以外は存在していませんので、描くことはできません。ですから今作は、生身に等しい兵隊と「見たこともない奇妙な兵器を備えた宇宙から来た軍隊」の戦いとして描くことになります。
さらに言えば近年の「"ガンダム"スピンオフ作品が掲げる"リアリティ"」を今作では採用していません。前線で戦う兵隊が、初めて見たモビルスーツを「ジオンのMS-06"ザク"UのJ型だ!」などとわかるはずがありませんし、「"ザク"とは違うのだよ」と言ってみたところで、所詮、「"ザク"みたいな青いヤツ」です。頭部にツノが付いているとかいないとか、足が太いとか細いとか、よほど注意深い兵士による観察か、戦闘後の写真評価で違いが判明するというのが実際でしょう。つまりおおもとのTVシリーズ『機動戦士ガンダム』にあった"ガンダム"と言わずに「連邦の白いヤツ」、"ホワイトベース"と言わずに「連邦の"木馬"」といったセリフで示していた"リアリティ"を復活させることにしました。そういう意味では「"ガンプラ"的リアリティ」を求める方には不満があるかもしれませんが、おおもとのTVシリーズ『機動戦士ガンダム』での"リアリティ"に納得されていた方には理解していただけると思います。

[2]「U.C. HARD GRAPH」の世界観の中で苦心された点はどこですか?

今まで同様、今回も原点、TVシリーズ『機動戦士ガンダム』の世界観を崩さぬよう留意しました。小説オリジナル設定は小説内で消滅させるか、取るに足らないものという描き方をしています。これは既存作品の軒下をお借りするうえでの普遍的な"仁義"です。

[3]著者様からみての宇宙世紀へのこだわりのポイントなどはありましたか?

現実社会でも20代と50代とで話がかみ合わないことが多々あります。たった30年の差で価値観が大きく違う。"ガンダム"は「人類が宇宙に移民してからすでに半世紀(50年)」後のお話ですから、地球生活者には宇宙生活者の価値観は異星人同然に違うのではないかと考えます。強いて言えば、その部分が"こだわり"でしょうか。今回、連邦側の人々は、あえて古い文化を引用して描写したりしています。

[4]本書をどのような方に(ターゲットユーザー)読んでもらいたいですか?

アメリカ人……というのは冗談ではありません。あくまで「ヘイト・J・ブリッジス」という宇宙世紀の北米に住む著者が書いた小説として書いています。内容は30代〜50代の中間管理職やベテラン社員の方には理解していただける部分が多いかもしれません。

[5]読者様へのメッセージをお願いいたします。

『MS IGLOO』の今西監督に構想をお話しし、執筆を開始したのが3年前。その間、映画『世界侵略:ロサンゼルス決戦』、『ウォーキングデッド』や『フォーリング スカイズ』といったTVドラマシリーズ、ゲーム『HOME FRONT』などが発表されてしまい当初の構想を変更。遅筆ゆえ後塵を拝しましたが、逆に「"狙いどころ"は正しかったのかな」と思っています。それらの作品がお好きな方には気に入っていただけるかもしれません。

『機動戦士ガンダム U.C.ハードグラフ [小説] ジオン公国軍編』

吉祥寺怪人  きっしょうじかいと
1962年生まれ。玩具デザイナー、アニメ企画会社、模型雑誌編集者を経て、現在は模型・軍事・アニメ系の編集、ライターとして活動。
某戦車模型専門雑誌の編集長時代、『U.C.HARD GRAPH』の連載記事[一年戦争・戦闘記録集【宇宙世紀における地球 上の戦い】]を担当。その後、同企画および『機動戦士ガンダム MSイグルー2 重力戦線』のメカ設定協力として参加することになり、本書の執筆に至る。

[1]「U.C. HARD GRAPH」の小説を手がけてみていかがでしたか?

『U.C. HARD GRAPH』のプラモデルの企画段階において雑誌展開や設定協力で参加させていただいていた関係で、今回の小説化のお話を頂戴しました。私はこれまでおもに雑誌や書籍の編集の仕事をしており多くの作家さんをせっついて参りましたが、今回はじめて自分自身が書く立場になり、尻を叩かれる痛みと筆の重さを痛感……脱稿後のいまも緊張が解けません。発刊までにじつに長い期間を費やしてしまい、読者ならびに連邦軍篇の作者である高橋昌也さんにはたいへんなご迷惑をおかけしました。この場をお借りしてお詫び申し上げます。また、「MS IGLOO」スーパーバイザーの出渕 裕さんには、執筆の遅れで悩む私に「とにかく書き上げることだよ」と幾度も気遣っていただき大変な励みになりました。感謝いたします。

[2]「U.C. HARD GRAPH」の世界観の中で苦心された点はどこですか?

華々しいモビルスーツ同士の戦闘描写から視線をずっと下げ、今回の小説では『U.C. HARD GRAPH』の基本理念であるモビルスーツの足元での出来事にスポットをあてる形式をとりました。しかし些細なアイディアでも既出である場合が多く、その隙間を探すのが難しかったですね。とはいえ未熟な私は結局、全体の流れのなかで盛り上がりを設ける必要にかられ、モビルスーツ戦の描写を入れてしまうことになるのですが……。  逆に、登場するガジェットのほとんどは同シリーズでキット化されたものなので、読後にキットを改造したり情景模型作りをしたくなるような要素をいかに盛り込むかは楽しい作業でありました。

[3]著者様からみての宇宙世紀へのこだわりのポイントなどはありましたか?

ガンダム世界の映像作品において時間的な都合で割愛せざるを得ないような裏側を見てみたいという気持ちがありました。例えばテレビでの番組放送日の合間の一週間に、登場人物がなにをしているかといったような。コロニー生まれの公国兵たちが地球環境をどう捉えているのか、そして戦争終結後の生活など、映像では尺をとれそうもない部分に焦点をあてられればと試みました。またそれを、ガンダム世界における出版物であるかのような体裁にできればと心がけましたが……果たして!?

[4]本書をどのような方に(ターゲットユーザー)読んでもらいたいですか?

これは、1979年に『機動戦士ガンダム』をリアルタイムで視聴し、その興奮を内包したまま現在にいたる世代、アラフィーの皆さんでしょうか(まさしくずばり著者本人も該当者なのですが……)。ミリタリーと模型好きな高校生が、一年戦争にタイムスリップしたらどうなるか……そんな気分でお読みいただけたらと思います。そして、「戦中派」の子供の世代である現在の中高生が、もしも本書を読んだならどのような感慨を抱くのかにも興味があります。

[5]読者様へのメッセージをお願いいたします。

『機動戦士ガンダム』放映から三十余年が過ぎたいま、一年戦争という架空の戦史は現実の歴史の一部となったといえるかもしれません。当時と変わらない熱量で作品を語り、商品に手を伸ばす私自身が、まるでコロニー世界のような閉じた円環の内側で暮らしているかのようでもあります。本書にはそんな自分の焦燥が色濃く出過ぎているかもしれず、違和感を感じる方もおられるかもしれません。ご笑覧いただけましたら幸いです。また、進化・増殖を続ける「ガンプラ」の1/144、1/100といったスケールではなく、『U.C. HARD GRAPH』が1/35というミリタリーモデルの世界標準スケールで展開されていることに改めて着目していただき、本書を通じガンダム世界のホビーをより深く広く楽しんでくださることを願っております。

『機動戦士ガンダム U.C.HARD GRAPH 鉄の駻馬』

宇宙世紀0079年、ジオン公国軍クワラン曹長は何故ワッパでガンダムに戦いを挑んだのか?
日々の戦いの中で、いかにしてその戦法を見出したのか?
2011年12月号から、角川書店「ガンダムエース」にて連載がスタートした、
夏元雅人の漫画『機動戦士ガンダム U.C.HARD GRAPH 鉄の駻馬』。
夏元雅人&今西隆志のタッグによるガンダム戦場漫画の第1巻が遂に登場!

夏元雅人  なつもとまさと
千葉県出身。漫画家、イラストレーターとして活躍。
「ガンダムエース」(角川書店)では、ゲームのストーリーをベースにした漫画『機動戦士ガンダム戦記 Lost War Chronicles』、『機動戦士ガンダム外伝 宇宙(そら)、閃光の果てに…』、『機動戦士ガンダム戦記 U.C.0081-水天の涙-』、オムニバス短編形式の戦場漫画『GUNDAM LEGACY』を連載。現在は『機動戦士ガンダム U.C.HARD GRAPH 鉄の駻馬』を同誌にて好評連載中。

[1]「U.C.HARD GRAPH」のコミカライズではありますが、描かれるきっかけのエピソードはありますか?

今までMS(モビルスーツ)をメインにした漫画を描いていたのですが、今回は兵士目線の戦場漫画を描きたいとガンダムA編集部にわがままを言ったのがきっかけでした。しかも主人公はTV第14話にしか登場しなかった脇役キャラの「クワラン曹長」。そして主人公メカは「ワッパ」。登場MSは「ザク」のみ。
なかなか難しい作品だなという不安はありましたが、それでも描きたいという気持ちにさせてくれたのが、草Kさんのデザインされた「U.C.HARD GRAPH」の「ワッパ」でした。もともと「MS IGLOO」や「U.C.HARD GRAPH」用に描き直されたデザインの数々はどれも兵器としての現実味を追求したものばかりで、そこには戦場で活躍する人々の存在がはっきりと感じられるんです。
それを漫画でも表現したい! それが始まりでした。

[2]「U.C.HARD GRAPH」の世界観の中で、夏元さんが描きたい!!もしくはこんな点をこだわってますという点はどこですか?

やはり兵士の目で見た構図にはこだわってます。
というのも今まで描いてきたMSを中心にした内容の作品は、やはりMS目線、つまりMSを擬人化した構図を多様することが多かったんです。MS同士のサーベルの つばぜり合いなんてシーンでも、まるで人間同士が戦っているような表現にしていました。
そのほうが派手になるし、かっこよくなりますから。でも今回は戦場の兵士を描きたい!
となると、MSは人が見上げた巨大な兵器という存在でしかないんです。
そんな戦場の空気みたいなものを描いていきたいなと思っています。

[3]機動戦士ガンダム U.C.HARD GRAPH 鉄の駻馬をこれから読まれる読者様にメッセージをお願いいたします。

ガンダムという作品はその懐の深さが魅力なんだと思っています。
その深さがMSV(モビルスーツ・バリエーション)や番外編などの作品の多用化をうながし
さまざまなファンの広がりを展開させています。そのうちのひとつとして、
「鉄の駻馬」も受け入れられたら、作者としてうれしい限りです。
ちなみに自分は兵器を描くのが大好きです(笑)。
戦争行為は反対ですが、そこに存在する兵器は単に人が使う道具でしかありません。

だからこそ使う人間のエゴが物言わぬ兵器に存在感を与えてしまう。そこに魅力を感じます。
「鉄の駻馬」はそんな想いを込めて描いています。
ぜひ皆様にも「鉄の駻馬」を手にとっていただき、何かを感じていただけたら、作者としてこれ以上の幸せはありません。

『U.C.HARD GRAPH』シリーズの今西隆志監督からも感想コメントをいただきました。

『U.C.HARD GRAPH』は、一年戦争のガンダム世界を尊重しつつ、『ロボットもの』のジャンルを越えて、幅広くその世界観を楽しもうと企図されスタートしました。
それは、モビルスーツではないプラモデルの企画開発から始まりました。果たして、それらを『ガンプラ』と呼んで良いものか、どうか? 当時の良い意味での感慨です。
更にこの度、小説というジャンルで、しかも、2冊同時刊行の形式で、兵士たちの内面が描かれることになったのです。
私は、執筆されるお二方に任せっ放しでしたが、それぞれの解釈によるU.C.HARD GRAPHの戦場が描写されており、大変、興味深い仕上がりです。是非、御一読下さい!

 

3冊同時発売記念の記念イベントが、2012年6月3日(日)に東京都・新宿ロフトプラスワンにて開催されます。
そちらにも是非お越しください。

機動戦士ガンダム U.C.HARD GRAPH プラスワン

開催日 2012年6月3日(日) 18:00 開場 18:30 開演
会 場 新宿ロフトプラスワン
ゲスト 今西隆志・夏元雅人・高橋昌也・吉祥寺怪人 、山根公利、草K琢人、山田卓司、
川口克己(バンダイ ホビー事業部)、江上嘉隆(バンダイ ホビー事業部)、村瀬直志(ホビージャパン)
主 催 株式会社エンターブレイン
協 賛 株式会社バンダイ・株式会社サンライズ・株式会社角川書店・株式会社ホビージャパン

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