バンダーホビーセンター探訪記 第1回

 去る5月19日、静岡ホビーショーの視察を終えた我々『U.C.HARD GRAPH』スタッフは、バンダイ ホビー事業部の新たな生産拠点であるバンダイホビーセンター(新・静岡工場)を訪れた。
 ホビーショー会場に近い静岡市長沼の地で、この春から稼動を開始した同施設は、世界に類を見ない独自の生産技術を有しているという。それを見学できるとあって、我々の期待は否が応にも膨れあがっていったことは言うまでもない。
 四半世紀を越えるガンプラ史の中でも異色な企画『U.C.HARD GRAPH』はここで作られていくのだ。鼻血が出そうなほど興奮!てなものである。
 果たしてホビーセンターとはいかなる技術と設備を持つ施設なのか。バンダイホビーセンターの秘密を、今回から2回にわたってお届けする!

▲バンダイホビーセンター全景。
壁面の黒いプレートは太陽電池パネルとのこと。

 ホビーセンターは清水市(現静岡市清水区)にあった静岡ワークス(旧・静岡工場)の後継施設として建設され、今年(2006年)3月に操業を開始したばかり。壁面いっぱいに取り付けられている太陽電池がシックな雰囲気を醸し出している。建物の入り口には、実物大を思わせるガンダムの勇姿を描いた巨大なディオラマ写真のみならず、地球連邦軍のエンブレム、そしてアナハイム・エレクトロニクスのロゴが見える。

▲ザクを切り裂くガンダムと、地球連邦軍のエンブレム。
近くで見るとけっこう迫力がある。

 その偉容に思わずクリエイターの出渕氏、山根氏、草K氏がどよめいた。

 

▲戦隊ヒーローのごとく立ち並ぶケロン軍の精鋭、ケロロ小隊の面々。下の柱にはモノアイが(笑)。

 入り口のエントランスを抜けると、1階はショールーム。フロアは3階まで吹き抜けになっており、開放感満点。ちょっと視点を上げると、ケロロ軍曹たちが出迎えてくれている。さすがは宇宙でも指折りのガンプラマニア、こんなところにも姿を現すとは侮り難し……! 左右にずらっと並んだショーケースには、これまでバンダイが送り出してきた、数々の模型が年代ごとに飾られていた。こうした模型はバンダイの歴史であることは無論のこと、日本の模型史の一側面でもある。昔、少年時代に手にしたモノや憧れつつも買えなかった模型を前に、スタッフたちは思わず見入ってしまった。

▲エントランスショールームを見学するスタッフ一行。

 中央には『バクシード』のサーキットと共に去年スーパーGTで戦ったスープラの実車がある。やはり実物の持つ存在感にはなんとも形容しがたい凄みがあり、来訪者の目を釘付けにすることは間違いない。

 3階へ移動すると、そこはオフィスエリアになっていた。企画開発や設計、金型や生産などの管理部門、お客様相談センターが、広大な一部屋に配置され多くのスタッフが働いている。旧工場ではこれらは3つの拠点に分かれていたが、部署間のやりとりをスムーズにするためにとの配慮から、こうしたレイアウトになったのだという。『U.C.HARD GRAPH』の設計はここで行われ、プラモデルとして具現化するのだ。
 ちなみにホビーセンターのスタッフには、地球連邦軍の軍装を模した上着が支給されている。これは腕部に"階級章"が縫い込まれているスグレモノ。

▲思わず地球連邦軍の研究施設かと勘違いしそうな雰囲気である。

 同じく3階には「光造形室」と呼ばれる小部屋がある。ここには3DのCADデータから素早く試作モデルを造る最新の試作造形システム「EDEN」が設置されていた。このシステムは驚きの逸品なのだが、詳しいことは次回で。

▲ショップルームの様子。奥の壁に掛かっているのは、ガンプラのボックスアートである。

 2階に下りると、そこにはショップルームと呼ばれる、店舗を模した空間がある。ここはガンプラの陳列方法などをお店に提案するための、一種のシミュレーション装置として運用するらしい。この、ところ狭しと並べられているガンプラにはきちんと製品が入っている。特別に見学させてもらったスタッフの間から、「欲しいヤツがある!」「参考用に貰えないかなぁ」との声が……(笑)。
 その奥には貴重な歴史的資料を陳列したアーカイヴコーナーが設置されていた。昔作られた1/60ウォーカーギャリアの木型など、通常は見ることができない「お宝」が飾ってあり、スタッフがふたたびどよめいたことは言うまでもないだろう。
 その後、ガラス張りの見学用スロープへ移動、2階から1階を見下ろすように、バンダイ製プラモ最大のポイント「イロプラ」を生む成形機が並ぶファクトリー・エリアを眼下に眺める。

▲見学スロープからずらっと並んだ多色成形機を眺める。圧倒されそうな景観だ。

 ホビーセンターが擁する目玉設備のひとつが、この新型多色成形機だ。これは従来の油圧式に対し電気を用いたモデルで、取り出し機などの付帯設備も新しいものに改められ、設備全体の生産能力がおよそ20%アップした。これだけでも効率化としては非常に高い数字と言えるのに、将来的には金型交換なども合理化し、もっとキャパシティを向上させる予定というから驚きである。ちなみに新型多色成形機は世界で唯一、このホビーセンターにしかない技術なのだそうだ。この世界最高の技術を誇る多色成形機がずらりと並んでいる様子は、なかなかの壮観である。「良質のガンプラが手に入るのもこの機械のおかげ」と思うと、自然と身が引き締まり手を合わせ拝んでしまう。全国のガンプラファンのみなさんも、静岡県長沼に向かって朝夕には遙拝をするべきであると思うがいかが?

 次に、金型と成形の現場がある1階のファクトリー・エリアへ移る。と、そこで我々を待っていたのは、なんと緑と赤の2種類のザクだった! なぜここにジオン公国軍が誇る名機が!? まさか連邦軍の捕虜となり、こき使われているのか? ジュネーブ条約違反だぞ!!(←ヲイヲイ)

▲働き者のザク型自律式搬送機。なかなか可愛らしい雰囲気だね。
  

 写真を見ればわかると思うが、正しくはザクを模した搬送用ロボットである。「01」がシャア専用ザク、「02」が量産型ザクをモチーフにペイントされているのがご愛敬。「01」に至っては、ちゃんとブレード・アンテナも装備しているのだ。けっこう凝り性だね。
 さて、驚く我々をよそに、彼らは一心不乱に作業に没頭、健気に重い荷物を運んでいく。その姿に、スタッフ一同は思わず目頭を熱くしたのであった(?)。
 次回は金型の制作過程や成形機の性能など、高度な技術とそれを支える設備を紹介していく。乞うご期待!

カテゴリートップに戻る