第4回のフィギュア制作から始まった工作編も、いよいよ大詰め。今回は、前回完成下準備が終わったジオラマベースの塗装仕上げ編です。
天然の素材などを織り交ぜて、キットの組み立てとはちょっと違った工作によって、フィギュアを飾るためのベースの制作は終了しているわけですが、一応、塗装に入る前に石や草などがしっかり接着されているか確認します。塗装中に取れてしまったりすると、リカバーが大変です。もし、外れそうなものがあれば、マットメジウムで接着しておきます。
ジオラマベースの塗装には、水性アクリル塗料を使います。ラッカー塗料だと、天然素材をいためてしまうことがあるので、使用する際には注意が必要です。
また、今回は基本塗装をするにあたって、エアブラシを使用しました。筆塗りでも問題はありませんが、広範囲を塗る際は、エアブラシを使用するとムラが少なく塗装することができて、効率がいいです。
ウェーブ・コンプレッサー317[タンク付]
エアーを一定以上溜め込んで自動的にON/OFFする機能が素敵。
作業がはかどります。(木内)
スーパーエアブラシ・0305
ノズルを交換する事ができるエアブラシ。
カップが大きいので塗料がたくさん入るのがお気に入り。(木内)
では、いよいよ塗装開始。まずは、全体をちょっと暗めの色で塗装します。色は、岩や草の根本の影になる部分の色をイメージして調色しています。場所が、砂漠なのか、湿地なのか、乾燥した大地なのか……など、完成後をイメージして下地の色を決めましょう。ちなみに石井のジオラマはヨーロッパの乾燥した土地をイメージしています。
「じゃあ、僕は湿地帯をイメージして塗装していきますよ。」(木内)
まずは、エアブラシで全体を塗ります。この際、草の根本や岩と地面が接するところの塗り残しなどないように注意。草や下草部分は、あとで色をつけられるので、まんべんなく塗るように心がけましょう。
基本塗装が終わったら、ここからは筆塗りで作業をすすめていきます。
「全体的にもう少し明るめにしたいので、基本塗装の上に明るい茶色を塗っても大丈夫ですか」(木内)
影の部分が消えてしまわないように注意すれば、エアブラシで基本塗装のトーンを上げてもOK。このあたりのやりかたは、個人の好み次第です。
次は、岩の塗装です。基本色を塗った岩を、まずはブラウンとブラック、それに少しだけ白を混ぜた色で塗装します。そこに、少しずつ白を加えて明度を上げた色でエッジを際立たせるようにドライブラシで仕上げていきます。3〜4段階くらいグラデーションをかけるくらいが丁度いいでしょう。大きな岩だけでなく、小石にも同じような処理を忘れずに。
「うわっ、だんだん本当の岩みたいになってきた……って、もともと本当の石なんだけど(笑)。でも、こうして色を塗ると小石が岩に変わって、リアル感が増してくるんですね。いい感じになってきた!」(木内)
岩の塗装が終わったら、今度は地面の塗りに入ります。ここも、基本的にはドライブラシで塗っていきます。さっきも言ったとおり、自分の仕上げたい土地の色を出すのが重要なので、イメージに合わせた色を作りましょう。
石井の場合は、サンドイエローとフラットアースを混ぜてまず、第1段階の塗装を行います。そこに、さらにバフやホワイトなどの明るい色を混ぜながら、明度を上げつつ仕上げました。
「地面も陰影が出て、なんか雰囲気が変わりましたね。岩と地面の色に差がでるようになっているのもまたリアルですね〜」(木内)
この時、地面と岩の色が同じになる過ぎないように注意しつつも、逆に差が出ないようにするというバランスが大切。
地面の次は、下草の塗装です。季節によって下草の色は変わるので、季節感を重視して色を付けましょう。秋や冬だったら枯れた色、春や夏ならば緑色が基本。石井は、春先をイメージしてグリーンで塗装しました。もちろん、ここもドライブラシで塗っています。また、合わせてザクマシンガンの薬莢も真鍮の色で塗装。少し風化したイメージで地面と調子を合わせた汚しを加えました。
草に関しては、今回は素材の色を活かしていますが、夏をイメージするならエアブラシでグリーンに塗るといいでしょう。ここで、一度フィギュアをベースに載せてみて、雰囲気をチェックしてみました。
「おお、なんか僕のはかなり上手くないですか? いい感じになったな〜。本当に、フィギュア単体に比べるとこうしてベースに載せた方がやっぱりイメージが広がりますね。これで完成じゃないっすか?」(木内)
完成まであと少しです。今はベースとフィギュアの色合いが合っていませんので調整が必要です。フィギュアの足下は地面と似た色で汚しをつけておきましょう。こうすることで、フィギュアとベースの色味があって、フィギュアの浮いた印象がなくなります。
いよいよ仕上げです。より地面の雰囲気を出すのに、今回はパステルを使用しました。地面の色に近いパステルを用意して、茶こしや紙ヤスリを使って粉にします。
粉にしたパステルを筆にとって、地面や岩、フィギュアの足下に擦りつけます。すると、砂っぽい雰囲気がアップ。ただし、場所によってはやりすぎは禁物。また、泥濘地帯を再現するには、粉にしたパステルをアクリル溶剤で溶いて塗りつけるという表現方法もあるので、やはりケースバイケースで使い分けるといいでしょう。
「おお! さらにフィギュアとベースが一体になった! いや〜、最初はどうなるかと思っていたんですけど、思ったよりも簡単に、いいものができて満足度が高いっすね。」(木内)
これで、最後にマスキングテープを剥がせば完成。マスキングテープを剥がす時に、地面がかけてパテが剥き出しになってしまうこともあるので、その際は地面と同じ色でリタッチしておきましょう。
「張り切ってパテを盛りすぎてマスキングテープが剥がれないんですけど……。こんな時はどうしたらいいですか?」
パテの部分をデザインナイフで削って、テープを剥がしてから色の剥げたブブ分をリタッチすれば問題なし。そうならないように、マスキングテープの上にパテをはみ出させないように(笑)。
「それは、基本っすね……。うまくはがれないや……。」(木内)
というわけで、ついにジオラマが完成。
フィギュアを完成させたあとに、シンプルなジオラマベースの制作に入ったため、ドラマ性こそ薄いが立派な情景模型となった。
兵士の立っているジオラマのスペースは小さいが、その向こうに広がる風景を少しは想像してもらえるだろう。
「なんか、ジオラマって難しい印象があったんですけど、やってみると作業は楽しいし、難しいこともなかったですね。状況を想像して作るのって、普通に単体のプラモデルを完成させるのとは違った楽しみがあって、面白かったです。今度は、“こういうシチュエーションのジオラマを作ろう”って考えてから作業に入ってみたいですね」(木内)
情景模型の楽しみのポイントは、シチュエーションやドラマの再現にあります。今回の基本的な工作を応用していけば、よりドラマッチクなジオラマが制作できるはずです。そうした、“想像して情景を作り上げる”のが、まさに情景模型の醍醐味と言えるでしょう。
ということで、連載でお届けしてきたフィギュア制作→塗装→ジオラマ制作の基本的作業は終了。思ったよりも簡単に、情景模型が作れることが判ってもらえたと思います。もちろん、数をこなしていけば技術もアップして、情景模型作りがもっと楽しくなるのは確実です。まずはフィギュアを1体、失敗を恐れずに制作にチャレンジしてみましょう。
こうして、第2段階を終了した我々は、より『U.C.HARDGRAPH』を深く楽しむために、当然ながら次なるステージへ向かいます。新章突入となる次回をお楽しみに!