ハードグラファーへの道 第7回

文:石井誠

 『ハードグラファーへの道』第7回目は、ジオラマ制作編に突入! 前回までにフィギュアの塗装を終えているので、フィギュアを飾るジオラマベースを作っていきましょう。

 フィギュア単体を完成品として楽しんでもいいけど、それにちょっとしたベースを付けるだけでドラマチックな雰囲気が大きく広がります。これぞまさしく“情景模型”。
 ジオラマベース作りは、メカやフィギュア単体を完成させるだけでは味わえない要素を多分に含んでいるし、やってみると普通の模型作りにはない楽しみも見いだせるはず。ということで、気負わずに挑戦していきましょう。

 使用するのはもちろん、前回までに完成したフィギュア。実際には、作りたい状況を考えて、それに合わせてフィギュアの制作より先にジオラマベースを作っておいた方がいい場合もありますが、今回は完成したフィギュアに合わせる方向で進めます。

「復習に何体か塗装しておいたんですよ。今回はこの1体を加えて2体のジオラマでいきたいと思います!初心者のくせに無謀ですかね?」(木内)

 もちろん、フィギュア1体よりも2体のほうが、よりドラマが生まれやすいのでそれもOK。その際は、フィギュアの仕上がりに差がでないように、塗装の際に注意するといいでしょう。

「手元に同じ塗料がなかったので、後から塗装したフィギュアの装備品の色が一部違うんですよね・・・・。あとで誤魔化しときます。(笑) 」(木内)
 では、ジオラマ制作の前に準備するものを紹介していきましょう。

 まず、土台となる部分。今回は模型店などで簡単に買える、デコパージュの小さいサイズの物を使っています。飾りたいフィギュアの大きさに応じて、大きいサイズのものを買ったり、自分で土台部分を作ったりすることもありますが、最初は既製品でいいでしょう。

 土の部分には、今回はD.I.Y.ショップやホームセンターで売っている木工用のエポキシパテを使用しました。このパテは、硬化時間が短いので作業効率がいいのがポイント。ただし、値段が高いので、大きいサイズのジオラマには不向き。大きいジオラマを作る際にはファンドやフォルモといった石粉粘土を使うといいでしょう。
 ちなみに、今回のジオラマサイズだと、木工用パテは製品の約半分の量で地面部分が完成しています。

 そして、ジオラマの上に置く草や石に使う物を用意。小石は鉄道模型に使うものや、熱帯魚の水槽の中に敷く物などが使えるので、探してみるといいでしょう。今回は、小さいサイズのものは鉄道模型用、ちょっと大きいサイズのものは園芸用のものをチョイスしています。その他、園芸用のコルクブロックなども大きな岩として使えます。

 草は、今回2種類用意しました。ひとつは背の高い草を表現するためのムースの毛。これは、釣り用の毛針を作るために売られている物で、アウトドアショップや大きい釣り具店などで手に入れることができます。細かい下草には、スタティックグラスと呼ばれるテクスチャーを使用。ムースの毛は荷造り用の麻紐をほどいたもの、スタティックグラスはいらなくなったぬいぐるみの毛先を切ったものでも代用できるので、そうしたものを使用してもいいでしょう。

ムースの毛 スタティックグラス

 その他に、画材店で売っているマットメディウムとモデリングペーストを用意します。マットメディウムは、ベースに石や草を固定するために使用します。なければ、水で溶いた木工用ボンドでも代用可能です。モデリングペーストは、石膏を混ぜた下地作り用の素材で、地面の自然な雰囲気を作るのに役立ちます。

マットメディウム(右側)
 本来はアクリル絵の具の定着力をあげるためのメディウム(希釈材)で、
その名のとおりつや消しに仕上がるのが特徴。木工用ボンドに近い接着剤としても使用できる。

モデリングペースト (左側)
石膏の粒を混ぜたメディウム。塗りつけると自然な凹凸が得られるので、
壁面や木目、地面などの表現に便利。

 今回紹介したものの他に、ジオラマ用の素材はたくさんあるので、模型店の店頭やジオラマ制作をしているモデラーの方のホームページなどを見て調べてみるといいでしょう。

 というわけで、いよいよ制作開始。
 まずはデコパージュを、地面を盛りつける部分を残してマスキングテープで覆います。マスキングをしないと、ベースが汚れてしまうので面倒がらずにやっておきましょう。
 次にデコパージュを目の荒い紙ヤスリで削っておきます。表面がツルツルだと、パテの食いつきが悪く剥がれてしまうことがあるので、それを防ぐためです。これで、基本作業は終わり。

 次は、パテ(もしくは粘土)で実際に地面を作っていきます。
 適量のパテをとり、盛りつけを開始。あまり平面になりすぎないように気を付けながら、地面を作ります。そこに、バランスを見ながら小石を配置しつつ、使い古しのハブラシを押しつけて地面に凹凸をつけていきます。
 小石を配置するときにはランダムに置かれた自然な雰囲気がでるように心がけましょう。
 この時、草を植えたい場所に爪楊枝などで穴を開けておくとあとから作業が楽になります。
 今回は、小石の他に『ランバ・ラル独立遊撃隊セット』に入っていたザク・マシンガンの薬莢を配置して賑やかしてみました。

「僕は、2人の兵士を違う高さの場所に立たせたいんだけど、どうしたらいいんですかね? 高低差を付けて二人の兵士を違う高さの場所に立たせようと思うんですけど、何も考えずにパテを盛ちゃっていいんですか?」(木内)

 地面の高さを変える場合には、適当な大きさの小石などを置いて、そこにパテを盛るといいでしょう。今回は、今までの造型の際に余ってしまったエポキシパテを適当な大きさに丸めてとっておいたものを使用します。パテの固まりを敷いた上にパテを盛ることで高さを作り出しています。

 ここで、フィギュアを配置してバランスをチェック。変なスペースがあったら、小石を追加して配置するなどの調整をしましょう。配置の関係でベースに十分埋まっていない小石をマットメディウムで止めて次の段階に入ります。マットメディウムは筆でビンから直接とって使います。細かい作業が多いので、面相筆を使うといいでしょう。筆は、乾燥する前なら水洗いでマットメディウムを落とせます。

 次はよりベースの雰囲気を自然な感じに近づけるために、モデリングペーストを使います。モデリングペーストは、大理石の粉がまざったペースト状のもので細かい凹凸を表現するのに最適。これをビンから直接筆にとって地面をザラつかせるように全体にぬりつける(大きめの筆にとって叩くように塗るとザラザラ感出やすいです)がことでより自然な土の雰囲気が出てきます。もちろん、露出している石などにも多少塗ってトーンを整えるようにしましょう。筆は乾燥する前だったら水洗いできます。

「モデリングペーストって石膏みたいですね」(木内)

 地面の雰囲気が完成したら、次は草を植えます。まずは、背の高い草から作っていきます。ベース製作の際に穴を開けて場所に植えていきます。
 植える場所が決まったら、ムースの毛を適当な長さにカット。穴の中にマットメディウムを流し込み、ピンセットで毛を植えていきます。この時、毛の量は気持ち多めにしておいた方が自然な雰囲気になります。
 
「そんな計画的な事苦手なんですけど、後で追加ってできんですか?」(木内)

 ベースが乾いていても、ピンバイスで穴を追加すれば草を増やすことは可能です。草を植えた後に、生え方のバランスが気になったらハサミで長さを調整するのも忘れずに。

 そして、最後は下草の配置です。地面を覆う芝生のような長さが短い草を表現します。まず、下草を生やしたい箇所にマットメディウムを薄く塗ります。そこに、スタティックグラスをちょっと厚めに降りかけましょう。ここで、スタティックグラスを押しつけてしまうと草が寝た状態になってしまうので、降りかけたまま乾いてくるのを待ちます。ある程度乾いたら、息を吹きかけて付着していないスタティックグラスを振り落とせば下草の処理が完了。

 これで、フィギュア1〜2体をならべられる程度のベースの基本工作が終了。次回の塗装&仕上げ編で完成させたいと思います。

 その前に、ベースにフィギュアを配置してみました。特にシチュエーションを決めてはいませんが、フィギュア単体で立っているときよりも雰囲気がよくなっているのが判るはずです。

「実際に2体並べてみたんですけど、いいですね〜。なんか、2人の視線の先に目標があるみたいな雰囲気がでてきたなと。思わず、いろんな角度からながめまくっちゃいますね。つーか、うまくないっすか?」(木内)

 ジオラマ制作の最大のポイントは、どんなシチュエーションを見せたいかというのを想像すること。今回は、スタンダードな形で見せるためにシチュー絵ションは凝っていませんが、いろいろと想像を巡らして、それを形にするのがジオラマの醍醐味なので自分なりにシチュエーションを考えて、地面の雰囲気やフィギュアの位置、配置するストラクチャーなどを揃えていくといいでしょう。

「なんか、模型作りの新たな方向性が見えてきてすごく作業がたのしかったです。はやく色を塗って完成させたくなりますね。」(木内)

 ということで、次回はいよいよフィギュア制作も大詰めです。

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