ハードグラファーへの道 第6回

文:石井誠

  “『U.C.HARDGRAPH』のフィギュアをきちんと塗ってみよう!”とのことで再スタートした「ハードグラファーへの道」は、フィギュアペイント編も第2回目にして、いよいよフィギュアを完成させます。

 前回は、顔の塗装を中心にお届けしましたが、今回は服装や装備品の塗装です。フィギュアの塗装において、衣装を塗るということは、ある意味醍醐味のひとつ。
 兵士の戦っている場所や時間、状況などを表現するための重要なポイントであって、「今、こいつは戦いの緊張感から開放されて休憩している」とか「厳しい環境の中で耐えている」というようなドラマを想像して、それを再現するわけで、そうした“戦場を妄想する”のが最大の楽しみと言えるかもしれません。だから、そうした状況を想像しながら塗っていくと、フィギュはより活き活きとしてくるはずです。フィギュアの衣装の塗装は、フィギュア製作のメインイベント。頭の中で、自分の塗る兵士の活躍するすがたをイメージして作業にはいりましょう。

 今回使用する画材は、前回同様、アクリル絵の具を中心に使用します。では、早速ペイントスタート!

 ちなみに、前回大失敗をした木内は、『地球連邦軍対MS特技兵セット』から、新たなフィギュアを制作してリスタート。
「いや、自分“連邦派”っスから、ジオンのフィギュアは乗れなかったんですよ」(木内)
と、言い訳をしつつも、しっかりと前段階の顔の塗装を自ら済まして、今回の塗装に参加しました。

 まずは、顔の塗装と同じく、最暗部の彩色から入ります。服装(ユニフォーム)やアクセサリーの最暗部となるのは、深いシワの入っている股や腕の付け根、ベルトやアクセサリーとの境界部分などです。ユニフォームはブラウン系の色で仕上げようと思っているので、黒に近いダークブラウンの陰色を作って、凹部に塗っていきます。

「かなり塗りにくい場所があるんですが、どうしたらいいんですか?」(木内)
 服装は、顔の塗装以上に複雑に入り組んだ箇所が多くて、筆を入れて細かく塗れない場所も多い。前回も顔編で書きましたが、そういう場所は完成したらほとんど見えません。他人のフィギュアをひっくり返して、隙間までチェックする事などありません! ということで、筆が入りにくい場所は、気にせず陰色で塗りつぶしてしまいます。見えている部分さえきちんと作業すれば綺麗に仕上がって見えるはずです。 陰色を先に塗るときは、多少のはみ出しは気にしなくてかまいません。あとから上に色を塗り重ねていくので、逆に変な塗り残しのないようにしっかりと色を乗せていきましょう。

 次に陰色を残しつつ、ユニフォームの基本となる色から、少し明度を下げた色を塗ります。今回はユニフォームをブラウン系のダークグリーンで仕上げるつもりなので、ダークグリーンと陰色と合わせた色を調色し、先に塗った影となる箇所を残すようにして塗装します。これで、2段階のグラデーションができました。

 塗装の方法としては、この暗めの基本色を全身に塗って、後から最暗部に陰色を塗っていくという方法もあるので、やりやすい方を選ぶといいでしょう。
「僕はこっちの塗り方の方がむいてるみたいです。
人それぞれやり方は違うんですね。」(木内)

 次にようやく基本色の塗装に入ります。陰となる部分からグラデーションをかけるつもりで、光のあたる部分に基本色を塗り重ねていきます。この際、服のシワを目立たせるつもりで、筆を運ぶと明部と暗部の差ができて雰囲気が良くなります。

「あ、なんか服のシワに表情がでてきて、いい感じなってきました」(木内)

 最暗部から基本色までの3段階のグラデーションができたら、次は基本色の明度をあげて、ハイライトを入れていきます。最も光のあたる部分を強調するように、エッジ部分を明るく塗ることで4段階(ハイライトだけで2段階のグラデーションを加えて5段階)くらいに塗ると服の立体感が強調されるはずです。

「段階を追って塗れたんですが、なんか色の境界の差が気になります……」(木内)

 段階的に色を混ぜていくグラデーションは、境界をいつもうまく処理できるわけではありません。その時は、基本色をベンチングソルベントで極薄に溶いて、全体に薄く塗ると色の境界を馴染ませることができます。ただし、色がきちんと薄めていなかったり、一度に塗りすぎると失敗の原因になるので慎重にいきましょう。

 メイン部分の塗装が終わったら、ユニフォームの飾りを塗ります。ジオン兵は赤い襟と黄色いライン、連邦兵は赤い襟と黒い肩部などがポイント。基本色ほど段階を踏まなくてもいいので、ここも少しグラデーションを入れられると雰囲気がよくなります。

「暗い色の上に、明るい色は乗りにくい気がするんですが……」(木内)

 ラッカー塗料だと、そうした問題がおこりやすいですが、アクリル絵の具は発色がいいので、不透明系の色であれば下の色に影響されずに明るい色を乗せられます。
 これで、ユニフォームの塗装は終了。

「なるほど。塗料の特性が違うから常識も変わってくるんですね!
アクリル塗料すげー。」(木内)

 ユニフォームの塗装が終わったら、次は装備品です。装備品の塗装の順番は、ブーツやベルト部分から先に塗り、その後アクセサリー、そして仕上げ塗装という順番で行います。

 アクセサリーに関しては、基本的にはユニフォーム部分と同じ作業となります。ポイントを上げるならば、ユニフォーム部分との素材の差を出すように気を付けるといいでしょう。例えば、ブーツやベルトが皮製ならば、ハイライトを明るめにすることで、光沢のある雰囲気に近づけることもできます。アクセサリーもユニフォームと同系の色でも、少し色味を変えると使い込み具合の差がでているような雰囲気にもできるので、いろいろと試してみるといいでしょう。
「調子にのってベルト周りにたくさんアクセサリーを付けたのを後悔してます・・・・
細かくて大変ですよ。」(木内)

アクセサリーも、暗部→基本色→ハイライトの順番で塗装を行って仕上げます。そし て、最後にベルトの金具などを慎重に塗ることでフィニッシュ。
 アクセサリー部分を塗る際には、ユニフォーム部分に塗料がはみ出ないように注意しますが、はみ出してしまっても基本色でリカバーすれば目立たなくできます。

「イマイチディテールの線が出ていないので、こんなことをやってみました」(木内)

 木内は塗装した全体の雰囲気が馴染んでいないように見えたので、塗装が乾いてから、グレー系のエナメル塗料をエナメル溶剤で溶いて、ウォッシングを敢行(ウォッシングとは、薄めた塗料で全体を馴染ませてそれを後からふき取る技法)。その結果、服装の縫い目なども目立つようになって、雰囲気がグッと良くなった。好みに応じて、こうした処理をするのもいいでしょう。
「ラッカーとエナメル塗料なら使い慣れてますからね。」(木内)

 そして、最後はヘルメットと銃。
「銃を塗装したんですけど、黒だけだとなんか味気ないですね……。リアリティーがないつーか……」(木内)

 銃の塗装は、ダークブルーと黒を混ぜた色を作って全体を塗り、その後ガンメタルでドライブラシをして、ディテールを目立たせるようにしよう。銃によっては、グリップ部分のウッドなども塗り分けると見栄えがよくなるので、資料などを見て仕上げていこう。

 ヘルメットは、本体を基本色で均一に塗って、エッジをドライブラシしてハイライトを入れる。ヘルメットの裏側は陰色で、ヘルメットの紐なども細部を塗り分けるようにする。

 そして、最後にヘルメットと銃を本体に取り付けて完成。取り付けは、接着剤がはみ出たりしないように慎重に。銃に関しては、手に接着しておいてから塗装してもいい。ポーズや状況に合わせてやるといいだろう。階級章などのデカールも最後に貼ってついに完成。デカールが目立つようであれば、これも極薄にといた基本色で馴染ませるといいでしょう。

 こうして、フィギュアの塗装も終了。フィギュア塗装初挑戦の木内も、リスタート後は順調に進め、初フィギュアが完成。

「前回あれだけ言われたのに、持ち手をちゃんと作らなかったので、何回かフィギュアを落としました。あちこち塗幕が剥がれちゃいましたよ……。やっぱり、基本は大事っすね。」(木内)

 さて、こうしてフィギュアが完成するとそれを飾る情景が欲しくなる……というわけで、次回はフィギュアを単体で飾るためのベース作りに挑戦! フィギュア1つでも十分に作品として楽しめるように仕上げます!

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