ハードグラファーへの道 第4回

文:石井誠

フィギュアを作ろう!

『U.C.HARDGRAPH』を実際に作ってみようということで始まった企画『ハードグラファーへの道』は、ついに新章へ突入!
 ちなみに、企画開始第1回では、成形色を生かしてフィギュアを作ってみることにチャレンジしました。しかし、あの手法はあくまで“フィギュアの雰囲気を楽しむ”程度の内容でしかありません。スケールモデルと同じレベルで、衣装のデザインやディテールにこだわった、フィギュアはやはり塗装して完成させるのが、本来の楽しみ方というもの。
 もちろん、フィギュアを塗装して完成させることは敷居が高いということは納得しているのですが、“難しいからやらない”のでは、いつまで経ってもキットの良さを楽しみ尽くすことはできません。
 当ホームページのコーナーのひとつである『U.C.HARDGRAPH開発秘話』第2回で、『U.C.HARDGRAPH』シリーズのフィギュア原型師である鬼丸智光さんに話を聞いていますが、インタビュー中に鬼丸さんは「フィギュアは塗装して楽しんでほしい」ということを強調していました。
 やはり、フィギュアを作り、塗装することが『U.C.HARDGRAPH』というシリーズを真の意味で楽しむことになるわけです。そこで、このコーナーでは、再びフィギュア制作にチャレンジします。
 もちろん、チャレンジするのは原稿を担当する石井とサンライズのWEB担当の木内。ただし、残念なことに今回の企画にあたって講師となる人物がおりません。そこで、ミリタリースケールモデル制作の経験がある石井が、純粋なアニメモデラーである木内にフィギュアの塗装を行うまでの行程を指導。二人ともプロのモデラーではありませんが、“素人でもここまでやれる”ということを見せていきたいと思います。
 ということで、今回は塗装前までの準備編をお届けしましょう。

フィギュアの組み立て

 前回は連邦軍兵士を制作したので、今回はジオン軍兵士をチョイス。『ジオン公国軍 ランバ・ラル独立遊撃隊セット』から、ジオン軍一般兵を組み立てて行きましょう。
 まず、組み立てに必要な道具を用意。

  • ニッパー
  • デザインナイフ
  • 接着剤
  • 紙ヤスリ
  • ラッカーパテ
  • エポキシパテ
  • ピンバイス
  • 真鍮線

注:ここに書いた工具は必ず必要というわけではありませんが、あるとより作りやすいです。記事を参考に、自分で必要と思われる工具を用意しましょう。

 そして、いよいよ制作スタート。
 まずは、このコーナーの第1回でも紹介したように、ニッパーを使用して慎重にランナーからパーツを切りだして、成形を行います。パーティングラインは、デザインナイフでカンナがけをするように削る方法に加えて、今回は紙ヤスリを使用。デザインナイフでは処理しきれない段差を400番の紙ヤスリで削り、その後600番を使用して仕上げます。コツは服のシワの形を綺麗に残すように、ディテールに合わせてヤスリがけを行うこと。
 ちなみに紙ヤスリは小さく折り畳んで使うと、削りやすいです。

 綺麗に整えられたら、次はパーツを接着。フィギュアのパーツ同士は、メカニック系のプラモデルと違って、はめ込むダボがありません。接着させる位置の微調整を行う必要があるので、瞬間接着剤ではなく、プラスチックを溶かして接着させるプラセメントとよばれるタイプを使用します。
 パーツには少し多めに接着剤をつけてパーツ同士を圧着させ、乾く前に適正な位置に合わせます。組み立てる順番は、胴体や大腿部といった大きいパーツから組んでいき、腕、頭、ブーツなどはあとから着けましょう。

 ちなみに、腕やブーツのパーツは同じような形のものが多いので、切り出しの際に注意。ちなみに、木内はパーツの番号を読み間違え、別のフィギュアのブーツを切り出し「このフィギュア、うまく立たないんですけど」という状態に……。基本的なことですが、説明書はよく読みましょう。

さて、ここまできた段階で、木内から質問。
「パーツ同士に隙間が空いているんですが、どうやって埋めたらいいんですか?」
 ガンプラは作り慣れている木内だが、フィギュアの組み立ては経験がほとんどなし。メカニック系とは違いパーツ同士を接着させても、フィギュアの場合はパーツの間に大きな隙間ができてしまうことが多いため、とまどい気味。
 そして、その隙間はエポキシパテを使用して埋めていきます。

 エポキシパテは、主剤と硬化剤の2つの素材を混ぜて使う粘土状のパテ。水につけることでベタつきがなくなって、扱いやすくなるので水を用意しておきましょう。混ぜたエポキシパテを適量とり、パーツの隙間に詰めていきます。この時、先のとがった粘土ベラのようなものや爪楊枝を使うと作業がしやすくなります。
 エポキシパテで隙間を埋めたら、つぎに洋服のディテールに馴染むようなシワを爪楊枝でつけると効果的。爪楊枝も水で濡らしながらやるとディテールを加えやすいです。また、エポキシパテを使うほどではない隙間は、ラッカーパテを使用して埋めます。

 ちなみに、プラモ歴が長いながらエポキシパテを使ったことがなかった木内は、この作業でちょっぴり感動。「エポキシパテって、こうやって使うんですね。今までは“ちょっと使いづらいパテ”ぐらいの認識だったんで」とのこと。フィギュア制作にはエポキシパテはかなり有効な材料なので、必ず準備しておきたい。

 こうして、胴体と大腿部の取り付けが終わったら、次は腕部の取り付け。
「武器を持たせる腕を接着剤だけで着けると、強度的に不安なんですけど」とまたまた木内から質問が飛び出た。
 もちろん、接着剤だけでも大丈夫ですが、微調整を行うということを考えると小型のドリルであるピンバイスと真鍮線を使用するのが無難。まずは、パーツを両面テープなどをつかって仮留めし、その周囲4カ所に印をつけます。印は腕と胴体の両方に残るようにしましょう。
 その後、パーツを取り外して、つけた印同士を直線で結びます。この印同士がクロスした場所にピンバイスで穴を開け、真鍮線を通せば補強が完了。こうすると、武器を保持させたりするポージングの微調整もしやすくなります。

位置が決まったら、流し込み式の接着剤を使ってパーツを接着。真鍮線は、パーツの大きさに合わせて0.5ミリから0.8ミリくらいのものを使うといいでしょう。もちろん、腕のパーツも隙間があれば、エポキシパテで埋めておきます。

塗装のための下準備

 こうして、パーツの取り付けが完了すれば、組み立て終了。顔の塗装などを考えて、ヘルメットはあとから接着するようにしましょう。(写真では、ヘルメットは仮留めしています)

 次は、下地作りです。フィギュアの塗装が行いやすいように、足の裏にピンバイスで穴を開け、真鍮線を差し込みます。そして、それをコルクブロックなどに固定すると下地作りから、塗装までの作業がやりやすくなるはずです。

 下地作りには、サーフェイサーを使用します。これを塗ることで、素材に塗料を定着させやすくなり、表面の傷を消す効果もあります。

ここで、また木内から質問。
「サーフェィサーは、グレーでいいんですか?」

フィギュアは肌色をはじめ、明るい色を使用することも多いので、グレーではなく白を使うといいでしょう。サフェーサーを吹くと色が均一になって、それまで見つけられなかった隙間や傷、処理をし忘れた箇所などを見つけやすくなります。そうした部分を見つけたら、修正を行って再びサフェーサーを吹くといいでしょう。
 サーフェィサーの吹きつけには、フィギュアのディテールが埋まらないように注意。一カ所に集中して吹きつけるのではなく、全体にサーフェィサーを乗せていくようにするといいだろう。

 武器や小物も見えにくい箇所に真鍮線を通して同じようにコルクブロックに固定。サフェーサーを吹いて下地処理をしてある。
 これで、下地処理も終了し、塗装の準備が完了。組み立てただけの状態に比べると、ディテールも確認しやすくなっているのが判るだろう。
 さて、次回はついに塗装編に突入。

 はたして、どんな困難が待っているのか……。

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