ハードグラファーへの道 第3回

文:石井誠

 『モデラーズフリマ』に訪れた第1の目的である“自分の作品をジオラマで撮影する”というミッションを果たしたライターの石井とサンライズの木内は、第2の目的を果たすべくタイミングを見計らっていた。
 その目的とは、有名モデラーに自分の作品を見せてアドバイスをもらうこと。
 今回のモデラーズフリマでは、二人のモデラーがバンダイブースにて作例制作の実演とトークショーを行っていたのだ。
 そのモデラーとは、このホームページでも紹介している『U.C. HARDGRAPH』の作例の制作を手掛ける、シリーズのプロデューサーでもあるバンダイホビー事業部の川口克己氏。そして商品のパッケージ用の塗装見本制作と月刊ホビージャパン誌上にて『U.C. HARDGRAPH』の作例を多く発表しているプロモデラーの山田卓司氏。まさに、『U.C. HARDGRAPH』の作例を見てもらうには、これ以上ない取り合わせといえるだろう。
 川口氏と山田氏が制作実演を終えて休憩に入るタイミングを見計らい、石井と木内が造った作例に対するコメントと『U.C. HARDGRAPH』シリーズを制作するにあたってのアドバイスしていただくことをお願いし、快諾してもらった。
 ちなみに、ガンプラ好きの石井&木内コンビしてみると、川口氏と山田氏という二人のモデラーは、ある意味憧れの存在。そんな方に自分たちの作例を見て貰い、さらにアドバイスをもらえるのは、すごく嬉しい反面「こんな作例、本当に見せていいの?」と思わず恐縮してしまうような状況でもあった。

川口克己氏コメント
「二人とも、時間をかけていないというわりには、全体の見せ方はとても上手いですね。あとは、細かい部分にもきちんと手を入れて表現するかがポイントですね。
 特にドライブラシ。傷などの表現をドライブラシで行う際に注意したいのが、筆目が見えないようにすること。ひとえに銀色の塗料と言ってもラッカー、エナメル、各社から発売されているマーカーなど多数存在するので、いろいろと試してみて、自分の使いやすいもの見つけるとその後ずっと使えますからね。銀色というのは、すごく目立つので適当に仕上げるのではなくて気を使って欲しいところです。
 他の泥汚れなんかにしても、やはり筆目が出るとスケール感を損なってしまうので、注意するといいと思います。実際に仕上げをするときに、“これは、実際には○○メートルのものだから、このサイズにするとこう見えるはず”と大きさをイメージするといいですね。それは、改造を加えてディテールアップする際にもそういう感じが大切になってきますからね」

山田卓司氏コメント
「ここまで仕上がっていれば、何も言うことはないですよ(笑)。あえて、挙げるとするなら、シーカーやサーチライトのような箇所は、実車ならばガラスが貼ってあるので、ツヤありの塗料で仕上げるとメリハリが効いていいんじゃないかと思います。車両全体がつや消しなので、そうした素材感の違いは目立つし、効果的。最後に目玉を入れるような感じでやると、グッと締まりますよ。例えば、荷台のところにあるパーツ。これは、明らかに消化器なので僕はわざと赤く塗って目立たせたりしていますし、こうした「明らかに判るもの」はちゃんと手を入れると違いますよね。
 このシリーズのいいところは、モロに軍用車両の塗装で遊べるところにあると思うんですよ。モビルスーツを模型として作るとスケール的にはどうしても細かい表現をしなくちゃならないけど、1/35サイズだと「ここは接地しているから、こんな傷がついて、こう汚れる」という表現ができるし、あまり繊細にしなくてもいいのがメリットですよね。色に関しても、使われている場所なんかに合わせて変えても誰にも文句を言われないですから。実際の戦車や工事用の車両をよく見て、汚れ方や傷の付き方なんかを研究しながら作ると、もっと楽しめるんじゃないかな」

 二人の作例をもとに語ってもらったポイントは、そのまま他の『U.C. HARDGRAPH』のラインナップを作る際にも参考になる意見であるとも言えるだろう。こうした、腕のあるモデラーにコメントをいただけることは、さらなるプラモデルの制作意欲の向上につながるのは間違いない。もちろん、ドキドキしながら川口氏と山田氏の話を聞いた、石井と木内の次なる作例への制作意欲がぐっと高まったのは言うまでもない。

 ちなみに、今回のモデラーズフリマでは、川口氏と山田氏の両名による作例制作の実演やトークショーでもこうした“キットを作る時のポイント”を判りやすく紹介。もちろん、実際にどのように手を動かしていいのかまでも、その場で見て知ることができた。
 今回、我々は取材という名目があったからこそ、時間をとってコメントをもらえたが、もちろんそうした機会を会場に訪れた一般の方が味わうことできるのが、このイベントのいいところだ。

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