ハードグラファーへの道 第12回

 「大きめのジオラマを作ろうシリーズ」(今回から命名)も3回目。今回は、地面にテクスチャーを加えるという、またまた地味な作業が続きますが、よろしくお付き合いください。
 前回完成した地面に草を植えたり、塗装を施すことでジオラマ全体の密度を上げていくのが今回の目的となります。メンバーは、引き続きライター石井とサンライズ木内がお届けいたします。

 さて、前回石井が作ったベースですが、乾燥を終えてみると、なんとショックなことに、まるで地震がおきたようにところどころにヒビが入っていました。「本物の地面もヒビ入ってることもあるし、そのままでもいいんじゃないの?」と思わなくもないですが、放置したままだと、やはりスケール的に不自然なのが気になるのでモデリングペーストを使ってヒビを埋めておきます。

「やっぱり、ベースが大きいと素材の収縮でヒビが入りやすいんですね。どうしたら、ヒビを少しでも防げるんですか?」(木内)

 素材を塗るときに一度にたくさん塗りつけずに、何度かに作業をわけるといいかも。また、素材に木工用ボンドを多めに足しておくとヒビが入りにくいです。何事も、慌てすぎは行けないと言うことです。今回ヒビが入ってしまったのは、もちろん作業効率を優先して一気に塗りつけ作業をしたから。辛抱たまらんのは、よくありません。模型作りには、時に忍耐力も必要です。

 ということで、修正が終わったら草を植えていきましょう。今回は、ガーデニング気分で、庭師になったような気分で作業を進めます!
 素材として用意したのは、ミニサイズのジオラマを作った際に使用したムースの毛に加えて、もう少し細い草を表現できる鉄道模型用のフィールドグラス。ベースの接着には木工用ボンドを使用します。

 作業の手順は、石井は草を植えるのを先に行い、木内はベースを先に塗装しています。どちらが正解というわけではないので、やりやすい順番で作業しましょう。

「僕は草を塗装するのが嫌なので地面を先に塗装しました。草を塗装中に地面にも草の色を吹いてしまいそうですからね。
グレー系の箇所が道路のイメージです。茶色の箇所は柔らかい土のイメージですね」(木内)

 では、実際に草を植える作業に入っていきましょう。ミニジオラマに比べて草を植える量が多いので、効率のいい方法で作業をすすめます。まず、木工用ボンドを塗料皿などの広口の容器にとります。そこに、密生させたい量のフィールドグラスをとって、根本にちょっと多めに木工用ボンドを付けます。
 そして、木工用ボンドがついたフィールドグラスを、田植えをするように地面に貼り付ける……この地味で忍耐力が必要な作業を、納得のいくまで繰り返していきます。

「いや〜、地味な作業ではありますが、フィールドグラスっていう新しい素材は、早く使ってみたかったんですよね。やっぱり、新素材を使うのって制作意欲がかき立てられますよ」(木内)

 ただし、田植えと違うのは、草を整然と植えていかないこと。「テキトーに植えればランダムになるんじゃね?」と思うのは、素人のあさはかさ。気が付くと人間は、一定のパターンで作業をすることが多いので、ここはテキトーのようで、テキトーでない感じで気を付けましょう。

「道端の標識のあたりに、うっそうと生えた草……という感じで密生させてみました。この草の接着は量の調整がしやすいのでオススメですね」(木内)

草の根元に白く見えるのが木工用ボンド。どれくらいの量のフィールドグラスに木工用ボンドをつけたのか判るだろう。

 一方、石井はベースのフチや木の根本などに、草を配置してみました。手法は、木内がとったものと同じ。ただ、種類の異なる草を意識して、ムースの毛も使っていますが、こちらはベースに穴を空けて植え込んでいます。
 今回、ベースにはワッパとテーブルを配置するので、それらを避けた場所に草を植えています

ベースのところどころに見える白い部分は、ヒビ割れの修正箇所。

 草を植えたら、次は剪定して長さを整えましょう。草の生え方は、やはり見栄えが大事なので、ハサミを入れていきます。ただし、この時ハサミは水平に入れるのではなく、タテにして少しずつ毛先を切っていくようにします。気分的には、カリスマ美容師が髪の毛にタテにハサミを入れてシャキシャキと切っていく感じ。ただし、切りすぎにも注意しましょう。
 また、草も真っ直ぐ伸びているもの、左右に広がっているものという感じで作り分けるといいかもしれません。

 草の長さを整え終わったら、次は下草の配置です。下草はミニジオラマでも使用したスタティックグラスを使います(なければ、フィールドグラスを短く切ったものでもOK)。
 下草を生やすときのポイントは、不規則&まばらになることを意識すること。実際の地面に生える草は、規則正しくならんではいないので、まばらになるように調整します。接着は、木工用ボンドを水で溶いたものを使用。
 下草を生やしたい場所に、溶いた木工用ボンドを塗りつけ、そこにスタティックグラスを振りかけていきます。
 下草は、道路などにはあまり生えないので、生えている場所を意識するのも忘れずに。たまに、配置するメカなどを置いて状態を確認してもいいでしょう。

 草と下草を植えたら、次はいよいよ地面の塗装です。ベースのサイズが大きいので、今回もエアブラシを使用します。地面を塗装する際には、暗い色を先に全体に塗って、次に明るい色で軽く陰影の表現をしておきます。この時も気をつけることは、均一にならないこと。というか、あまり気負わずに気軽に、わざとムラのあるように塗装して、自然な雰囲気になるようにしましょう。
 植えた草や下草は、後からエアブラシで色の調整ができるので、気にしないで塗ってしまってかまいません。
 一通り塗り終わったら、次は少し明るい色で、地面や岩などを明るい色でドライブラシすることで、より陰影を強調していきます。特に岩や小石は、グレー系や白系の色を加えるとリアルな雰囲気が増します。
 草や下草は、季節感を意識して、グリーンでエアブラシ塗装して仕上げます。

 これで、ベースの作業はひとまず完成! メインとなるメカを配置して様子を見てみましょう。

「おお、かなり雰囲気が出てきましたね。やっぱり草を生やすと雰囲気が出てきてジオラマって感じになりますね」(木内)

 途中段階でこうして配置して、色味などを調整してさらに完成度を高めていくわけですが、今回はひとまずここで終了。

「ここ、2回ほどはパティシエ風というか、ガーデニング風というか、なんか地味な作業が多かったですね。次の作業が楽しみなんですが、次はどうするんですか?」(木内)

 実は、見た目的にも地味な作業が続いていたのは気になっていたので、次回は『U.C.HARDGRAPH』らしく、メカの塗装とウェザリングに挑戦します! ジオラマ作業は、たまにやると楽しいですが、続くとさすがに疲れてくるので、つぎはカッコイイ汚しをメインに考えることで、モタつきつつある状況を打破していきますので、お楽しみに!

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