設定解説:地球連邦軍61式戦車5型“セモベンテ隊”

部隊解説

 「セモベンテ隊」とは、一年戦争開戦当初、モビルスーツを保有しない地球連邦軍が、ジオン公国地球制圧軍に対抗するために、鹵獲したザクUを主力装備として構成した特殊部隊の1つであり、その通称である。
 彼らは、鹵獲したザクUによって友軍を装い、ジオン軍地上部隊に接近、強襲を仕掛ける戦法を常としていた。セモベンテ隊の指揮官はフェデリコ・ツァリアーノ中佐であった。
 これらの特殊部隊は、通常、鹵獲ザクU3機と61式戦車1輌で小隊を構成しており、セモベンテ隊の場合、2個小隊をもって部隊を形成していたが、それらの部隊の編成数、作戦行動範囲は極秘とされ、実態は明らかにされていない。
 しかし、鹵獲されるザクUの数にも限界があり、ザクUの不足を補う意味で、61式戦車があてがわれた。これは、ザクUと同じ進出速度を維持できる数少ない連邦軍の戦闘車両だったからである。
 セモベンテ隊は、主に北米アリゾナ砂漠において活動していたようである。これらの特殊部隊の活動は、その性格からほとんど戦史に記録は残されないが、偶然に遭遇し、戦闘状態に入ったジオン公国軍第603技術試験隊の報告により存在が記録されている。
 現在確認できる戦歴は、以下のとおりである。

  • U.C.0079.04.29 ジオン公国軍 第128物資集積所襲撃
  • U.C.0079.05.09 ジオン公国軍 第67物資集積所襲撃

セモベンテ隊は、作戦行動中に、ジオン公国軍YMT-05ヒルドルブと遭遇。激しい戦闘の後、部隊は壊滅に追い込まれるが、ツァリアーノ中佐の必死の一撃がヒルドルブも道連れとした。
 セモベンテ隊の隠密裏の活躍は、ジオン公国軍の地球制圧作戦を僅かながらも遅滞させることに成功した。熱砂の陽炎に消えた彼らの功績は、その半年後、地球連邦軍の大反攻作戦となって結実するのである。

機体解説

 1年戦争に於いて、地球連邦軍にモビルスーツが配備される以前、陸上主力兵器として君臨したのが61式主力戦車である。
この戦車は、その名が示す通り、宇宙世紀0061年に制式採用されて以降、宇宙世紀0079年に出現したモビルスーツに主力兵器の王座を奪われるまでの約18年間に渡って活躍した。更に、主力を退いた後も宇宙世紀0087年頃まで使用され続けたと記録されている。
 61式主力戦車が長年に亘って主力戦車たり得た理由は、その基本設計が、将来の発展性を充分に考慮されていたからにほかならない。余裕ある巨体は、バージョンアップを可能とし、全地球規模での行動力を与えた。結果、様々な用途のバリエーションや発展型、果ては、多数の現地改修型までも生み出したのである。北米大陸、東南アジア戦域、ヨーロッパ戦線、更にオデッサやジャブローなど、1年戦争全期を通じ、あらゆる戦場でその勇姿は目撃されている。
ジオン軍モビルスーツを相手に撃破される姿ばかりが語られる61式戦車だが、実際には1年戦争の戦場に於いて、地球連邦軍が対抗でき、また、信頼できる唯一の兵器と言っても過言ではない。絶大な破壊力を誇る2連装155ミリ滑腔砲は、ジオン軍モビルスーツを一撃で仕留める性能を秘めていた。
 多くのバリエーションの中でも、後期型の代表的存在が、地球連邦軍61式主力戦車5型であった。

■通称:TYPE-61 5+   ■制式名称:M61A5 MBT
■全長:11.6m  ■車体長:9.2m  ■全幅:4.9m  ■全高:3.9m
■乗員:2名 
■主砲:連装式155mm滑腔砲
■副武装:13.2mm重機関銃 M-60 HMG  7.62mm主砲同軸機関銃

この後期型は、一年戦争を通じてヨーロッパ戦線や北米戦線にて活躍した車輌で、車体前部のフェンダーには雑具箱が設置されサイドスカートを装着しているなど、標準装備の形状が異なる。
 61式主力戦車は、開発当時の最新技術を導入したハイテク兵器であった。2連装155ミリ滑腔砲への砲弾装填は、人力では不可能なために自動装填装置を採用。更に衛星とのデータリンクシステムを駆使し、他車輌と戦場のデータ共有化による長距離精密射撃が可能であった。その結果、戦車長兼砲手と操縦手のわずか2名で運用が可能となっていた。
 しかし、レーダーや精密機器に悪影響を及ぼすミノフスキー粒子散布下の戦いは、61式戦車の運命を暗転させた。戦闘の要であったデータリンクシステムはダウンし、ハイテクによって受けた恩恵が仇となるという、時代の皮肉を一身に集める存在となってしまったのだ。
苦境に立たされた61式戦車であったが、それでもザクUの装甲を撃ち抜ける火力は、地球連邦軍製モビルスーツの登場までなくてはならない戦力であり、ハイテクの翼をもがれながらも奮戦し続けたのである。

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