設定解説:地球連邦軍モビルスーツとその部隊の成立と構成

 ジオン公国が、圧倒的国力を誇る地球連邦に対して独立戦争を仕掛けることができたのは、ひとえに画期的新兵器「モビルスーツ」の実用化があったからにほかならない。
 この1年戦争と呼ばれる戦いで、モビルスーツ「ザク」は、地球圏を瞬く間に席捲し、宇宙世紀0079年3月、破竹のジオン公国は、ついに地球侵攻作戦を決行した。
 地上戦闘においても、モビルスーツはその力を遺憾なく発揮した。ジオン公国地球制圧軍は、4月までに地球の重要拠点のほとんどを掌中に収めている。今次大戦の勝敗を左右する兵器はモビルスーツであることは、もはや疑いなかった。
 モビルスーツ開発に立ち遅れた地球連邦軍ではあったが、V作戦と呼ばれる連邦軍製モビルスーツの開発計画が密かに進められていた。宇宙世紀0079年7月、試作モビルスーツRX−78ガンダム1号機がロールアウトし、評価試験を開始している。
しかし、地球連邦軍にとって逼迫した戦局は、悠長に評価試験を待つ暇(いとま)さえ与えない。ただちに、RX−79計画は実行に移されたのである。
 このRX−79計画とは、先行量産型ガンダムRX−79[G]と先行量産型ジムRGM−79[G]の生産から始まる遠大な開発計画であった。
 これらの機体の特徴は、いずれも地上仕様機であったことだ。その理由として、宇宙仕様機の克服すべき課題が多岐に渡ること、地球圏における地球連邦軍の拠点がルナU以外に残されていなかった点が挙げられる。そして、一刻も早くジオンを地球から追い出さねばならなかったからである。
 興味深いことに、地球連邦軍は、このRX−79計画と同時に、モビルスーツ運用部隊を創設している。どれほど、連邦軍がモビルスーツを渇望していたかの証左である。
 地球連邦軍(E.F.S.F)は、宇宙軍省と地球軍省の二つに大別される。地球軍の中心戦力である地上軍(陸軍)(E.F.G.F)は、陸軍総司令部麾下、いくつかの方面軍に分けられていた。
 ジオン公国地球制圧軍中央アジア方面軍と最前線で対峙すべき地球連邦軍極東方面軍にも、宇宙世紀0079年7月、早々とモビルスーツ運用部隊が開設された。これが、コジマ中佐率いる第1機械化混成大隊、通称・コジマ大隊であった。
 第1機械化混成大隊は、本部管理中隊、MS第1中隊、MS第2中隊、対MS歩兵中隊で構成されていた。また、1個MS中隊には、4個のMS小隊が配置された。これは、3機の陸戦型モビルスーツと、1両のモビルスーツ戦闘支援車輌 M353A4 ブラットハウンドで編成した。
 この編成は、戦闘技量等に勝るジオン軍モビルスーツに立ち向かうために考案されたものであった。

 

 

 戦史上、数多くの戦功を挙げたコジマ大隊であったが、特筆すべきは、第08MS小隊である。小隊長のシロー・アマダ少尉を筆頭に、問題を起こしがちな隊員ばかりのこの小隊は、地球連邦軍において、定められたモビルスーツ地上戦闘規範を臨機応変に変則運用し、数々の新戦法を生み出して行った。

 

機体解説

▽名称
 モビルスーツ戦闘支援車輌
 M353A4 ブラッドハウンド

▽諸元
 全長:9.4m
 全高:3.3m
 全幅:6.3m

 一年戦争、開戦劈頭(へきとう)、ジオン公国軍の快進撃は、二つの軍事的大変革に支えられていた。その第一は、ミノフスキー粒子散布技術の実用化であり、その結果、敵の既存電子兵器の無力化に成功した。その第二は、レーダー等に依存しない有視界戦闘を重視した新兵器、モビルスーツの実戦大量配備であった。 
 緒戦においてジオン公国軍のモビルスーツ、MS-06 ザクの威力を思い知らされた地球連邦軍は、それまで細々と行ってきたモビルスーツ開発に本腰を入れ、同時に、モビルスーツ戦闘の戦術的研究をスタートさせたのである。 

−経験値の高いジオン軍パイロットの操縦する一つ目の巨人をいかにして倒すか−

試行錯誤の結果到達した結論が、情報収集とネットワークの要(かなめ)たる特殊車輌を、複数のモビルスーツと組み合わせた機械化混成部隊を編成し、そのユニットを敵に勝る物量で集中投入することであった。
 かくして、モビルスーツ戦闘支援車輌と分類すべき特異な車種の開発が急ピッチで行われることとなった。この開発車輌の最大の特徴は、アンダーグラウンド・ソナーを装備したことにある。これはミノフスキー粒子の影響を受けにくい地中を利用して、敵音源の位置測定や音紋解析による敵種別を可能とするものであった。
 また、車体は、多様な地形に対応可能で、モビルスーツの進出速度に追従可能なホバートラックに決定した。早急な実戦配備のために緊急開発されたこの車輌は、既存のホバー・カーゴトラックから派生したM340ホバートラックの更なる派生型XM353として誕生した。
 これに最低限の防衛用武装として20mmチェーンガンを搭載し、短距離通信機能を強化改良して制式化されたものが、モビルスーツ戦闘支援車輌 M353A4 ブラッドハウンドである。この車輌は、地球連邦軍極東方面軍第1混成機械化大隊、通称、コジマ大隊に陸戦型ガンダムと共に優先配備されていった。同大隊に於いて編成されたMS小隊各隊の活躍の陰には、この車輌の存在があったのである。

カテゴリートップに戻る